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36.平均台 152-160
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甲「回文て色々あるが、どれも上手に捻り出しているなあ」
乙「うん、全く。いざ自分で創作しようとなると、結構むずかしいもんだな」
甲「『文』にまで、ならないが、どっちから読んでも同じてえのを作ったから見てよ。先ず『力士が仕切り』、次に『パットで突破』」
乙「なるほど。お返しに一つ『運動会で食べたで烏賊うどん』、お粗末」

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A「見られる を 見れる、所謂『ら抜き言葉』が多く使われるのと同じように、『り』を『し』に置き換える言い方も随分多用されているねえ」
B「やっぱし。さっぱし。…」
A「それらは定着したのだろうが、『そのあたり』を『そのあたし』とは、抵抗があるね」
B「国語審議会を持ち出すまでもないが、表現も解釈も時代とともに変わるのが言葉なんだから、まあ時の流れに身を任せようじゃないの」

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兄「此間、山陽・山陰方面に旅行してさ、岡山から島根へ向かったと思いねえ」
弟「バスツアーで『蒜山高原』なども通るルートだって?」
兄「そうさ。そこで謎々だ。その高原に着いたのは何時ごろかな」
弟「めっちゃ易しいね。『ひるぜん』だから昼前11時あたりだろ」

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X「久し振りに『ヌード・ショウ』を観たよ」
Y「どうだった? 踊り子たち。一生懸命やってるだろ」
X「うん全く。健気で一途で、素晴らしいなあ」
Y「実に大したもんだ。これからは彼女らを『スト立派あ』と書こう」

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先輩「チャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』、読んだらどうだ」
後輩「是非とのお勧めなら一つトライしてもいいけど、コンコン狐が出て来るお話ですか?」
先輩「なぬ! ディケンズの名作に狐だと。なんでそんな突飛な発想をしやあがる?」
後輩「だって『お稲荷さん』て言ったんでしょう」
               
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娘「このお菓子、食べていーい?」
母「どの分かな。メーカーは何処だ?」
娘「メーカーだか何だか分んないけど、読めない漢字が並んでるよ」 
母「どーれ、アハハハハ。こりゃメーカーじゃ無くて銘菓だわ」

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 「平均台」は、主に言葉遊びで、所謂「駄洒落」オンパレードと言ってもよいでしょう。ここで多少趣向を変えて、文字遊び、つまり文字の並べ替えの世界へ……
「スカイツリー」→「リース追加」、「先輩」→「盃洗」、
「後輩」→「廃校」、「いじめる」→「めいじる」、
「退学」→「楽隊」、「食堂」→「消毒」
 全くの牽強付会で、面白くも可笑しくもない代物が多数ですが、中には連想が働き、ニヤリとするものもありますね。

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監督「野球用語を並べたら、物騒なのが一杯あるね。刺殺、三重殺、死球…」
選手「そうすねえ。セーフ、アウトを生きたの死んだのと訳すから良くないんすよ」
監督「じゃあ新しいのを作ってみてよ」
選手「セーフは、まる、アウトは、ぺけ。死球は、痛球でどうですか」
監督「それじゃ第2次大戦時に使ったストライクは、良し、ボールは、駄目などと大差無いな。使用禁止用語にならないよう気を付けて、現状維持で我慢しよう」

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爺さん「ここんところ異常気象とやらで、天気が随分変るなあ」
婆さん「そうね、小春日和から直ぐに気温の低〜い状態になったり」
爺さん「気象情報だからって上方にばかり行く訳じゃ無いけれど…」
婆さん「ええ、ええ。下方にも行きますよ。昇ったり降ったりして、丁度いい辺りに落ち着くわよ。果報は寝て待てでしょ」

出典:『いしい平均』増刊号(かぶや亭坊楽、2012年11月30日)
(2012年11月 石井)