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3.山小屋見てある記
 最近、中高年の山登りが盛んだ。山登りは基本的に山に登って下るという、人間が生来持ち合わせている「歩く動作」の応用なので、他のスポーツのように特別な技能を必要としない。初めのうちは日帰りで満足しているが、より高い峰を目指すのは人間の心理だ。すると、1日の行程では無理で山小屋のお世話にならなければならない。テントを担いでいく手もあるが、ほかに食料、寝袋なども必要で、まあ無理でしょう。

度を過ぎる混雑
 ところが、デアル。山小屋は街中のホテルとはちょいと違う。
 予約制を採用しているのは少数派。山小屋は緊急避難的な位置付けもあるので、来る者を拒まず次から次へと登山者を泊める。そのため、シーズンには1畳に2、3人は当たり前で、食堂、廊下などあらゆる空間が寝床になってしまう。小生が昔、尾瀬の長蔵小屋(自炊部)で経験したのは「1畳に2.5人」。あの鰯の缶詰状態で、汗くさい隣人の体臭を嗅ぎながら早く朝が来ないか、身動きデキズ。トイレに行こうものなら、戻ったときには自分の空間は消滅している。
 なお、登山者は皆汗くさく、悪臭をまき散らす。要因その1.山小屋は基本的にお風呂は無い。汚染防止と、そもそも水の確保が難しいから。高所では夏でも残る雪渓から水を引いており、飲料水も量り売りの場合あり。その2.多くの登山者は着換えなど持って来ない(?)。どうせ翌日また汗まみれになるのだし、リュックも重たくなる。
 食事は混んでいると入れ替え制だが、下界の食事と大差ない。ステーキを出す山小屋もあり、ヘリコプターという文明の利器のおかげ。ビールもヘリで運搬され、缶ビール小500〜600円也が相場。3000mを超える槍岳山荘の入り口脇にも、自動販売機が設置され、売店では生ビールを出していた。

トイレ問題
 朝、早めにトイレに行っておかないと行列の最後尾だ。トイレは基本的にポッチャンである。夏の終わりに唐松岳頂上山荘に宿泊したときには、他人様のおウンチたちがピラミッドになって、その頂上が小生のお尻まであと僅かであった。
 溜まった屎尿はシーズン終了後、谷に流されるケースも多く、白い川の流れに。そのため最近はトイレットペーパーをポッチャンせずに備え付けの箱に入れてもらい、焼却処分する山小屋が増えてきた。
 山小屋としてもいろいろ考えているらしいが、高所では微生物が十分働かないため、屎尿処理は大問題だ。いままで訪れた山小屋のトイレでは雲取山荘がベスト1、最も清潔だった。また、利尻山ではトイレブースが各所にあり、便袋・水溶性ティッシュも配布して屎尿問題に真剣に取り組んでいた。
 なお、上高地の梓川が大腸菌だらけなのは、山小屋のせいばかりではない。木立の中で用をたす輩も結構いるのだ。

それでもオアシス
 山登りは日常を離れて自然と遊ぶためだが、山小屋では日常的な人間臭い問題が集中しており、それもある期間に凝縮される。ゴールデンウィーク、海の日(山の日ではない)、お盆、週末は絶対避けるべきだ。また、頂上に近いほど混雑するので、少し離れたところを選択しよう。たとえば定員1500名の白馬山荘を避けて、それより下の村営頂上宿舎に泊まろう。
 こんな山小屋でも登り疲れて辿り着いたときにはオアシスであるのは確かだ。山小屋に泊まって翌朝、雲の上からご来光を拝もう。非日常の新鮮な体験ができるでしょう。

  参考HP https://homepage.obunko.com/yama58

(2002年11月 中山)