身近な庚申様
事務所のちかくに庚申様があって、通るたびに気になっていた。ビルの壁にきちんと納まっているので、気づかないで通りすぎる人も多い。ここからは離れているが、都電には庚申塚という駅もある。
コウシンっていったい何だろう。調べてみたくなったのは、足尾山塊の庚申山に登ってからだ。
庚申信仰とは
十二支と十干(じっかん)を組み合わせて年や日を数えると、60でひと回り。よく還暦なんていうでしょう。
ちなみに「壬申」の乱や「甲子」園などは「年」で、「庚申」の「日」も60日ごとに巡ってくる。そして、この日は大変なんだなあ。
中国の道教によると、庚申の日には人間の体にいる三尸(さんし)の虫が、就寝中に体から這い出して、閻魔様の部下にその人の行なった悪事を密告するのだ。
この虫の告げ口を防ぐには庚申の日に眠らなければいいわけ。これが庚申信仰で、一人で徹夜するのは詰まらないというので、仲間が集まってくるのは自然の成り行きだ。
平安時代からはじまった庚申信仰は、庚申講が各地で結ばれた江戸時代に最も盛んになった。仏教では青面金剛か帝釈天、神道では猿田彦大神を庚申様として祀る場合が多い。
庚申塚とは、庚申信仰によって建てられた、石塔や像を納めたお堂である。
庚申山に行く
さて、信仰の山・庚申山である。庚申山を知らない人でも、『南総里見八犬伝』は知っているだろう。八犬士のひとりである、犬飼現八(いぬかい・げんぱち)による化け猫退治の舞台も登場する。
そんな雰囲気の山には猿田彦神社跡(右上の写真)があって、往時の信仰の根強さが偲ばれる。
また、この山にはコウシンソウ(右下の写真)の自生地としても有名で、花期にはカメラをもった登山者で賑わっている。
食虫植物だからもっと大きいと思っていたが、スミレほどの大きさだったのは驚きだ。庚申山で発見された特別天然記念物で、岩場に貼り付き、風にそよぐ花をカメラが取り囲んでいた。
(2004年7月 中山)
|
|