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23.ゴキブリバスターの文学日記
ゴキブリにも負けちゃった
私は人のことを馬鹿と罵倒し続けてきたが、ばちが当たったのか、近頃脳の働きが非常に悪い。どうもシナプスが切れてきているようだ。

そのこともあってか、ゴキブリバスターとしての私にも、微妙な変化が出てきている。長年ゴキブリたちに鉄槌を下し続けてきた、ゴキブリに対して神にも等しいこの私が奴にやられてしまったのだ。

最近はゴキも大分少なくなったのう、と台所に立った私。そこへ洗い物の茶碗の陰からササーッと奴がでてきた。そしてすぐに隣の包丁の下にもぐろうとする。逃すかアー。いつものように電光石火、目にもとまらぬスピードで、右手を振り下ろした瞬間、激痛が走った。親指を砥石の角にしたたかに打ちつけたのだ。血がボロボロ出てきた。痛い。いつもゴキをいじめているから、正確には殺しているからばちが当たったのか。

「ばち」なんて言葉が出てくるのは気が弱っている証拠だ。人間は必ず衰微する。そしてボロボロになって死ぬ。帰納的にそれはカナリ正しい。私もそんなところに差し掛かったのかもしれない。

(2007年10月 宍戸)