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31.平均台 129-140
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     129
母親「学校から帰ったら、このメモを読んで、留守番ちゃんとやっててね」
娘 「はあい。メモ、今見ちゃおっと…水分をアズキにとること。なにコレ? お汁粉でも作るの」
母親「どれどこよ、あーこれは『こまめに』なの。ふざけて『小豆に』って書いちゃった」

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A「テレビが愈々地上デジタルに変わるんだね。準備を早くと盛んに呼び掛けてるな」
B「地デジ、地デジと連呼されると、血で血を洗う凄惨な闘いを想像したりしちゃうよ」
A「俺は、そこまでは思わないが、あまり尻を引っぱたく言い方だから尾篭な話、痔で痔を治す逆療法か なあーんて」

     131
先輩「どーだ、筋トレのポイント良く判ったか。習い性として身に付けるんだな」
後輩「確かに。ちゃんと『習慣』にしなきゃと必死ですけど、まだまだとても」
先輩「そうか今日で漸く7日目で、『週間』違いってとこか」

     132
司会者「当会を代表しまして会長より『謝辞』がございます」
会 長「えーっ、本日は…(だらだらだら)…又早い話が…(全然早くない)…処で昨今は…(古ーい事柄)…」
出席者のつぶやき「いい加減にしろ。『シャジ』を投げるぞ」

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宣伝マン「さあ来月1日から全部入れ替えますよ。シンダイ、シンダイにどうぞ」
通 行 人「なぬ、寝台? ホテルのか、列車のか」
宣伝マン「うんにゃ、ちゃうちゃう、こちとらパチンコ屋でやんす。いい新台ばっかりよ」

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爺 さ ん「生協の若い衆、よく働くのう。それだけの配達量をこなすたあ、大したもんだ」
生協担当者「恐れ入りやす。なあに此れしき、あっしの肺活量だったらラクショウでっせ」

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甲「動物愛護週間が始まるてんで考えたんだが、普段使ってる言葉の中にゃ動物に申し訳ないのが一杯あるなあ」
乙「確かに。馬脚だの、猫の額だの、蛇足なんてゾロゾロ浮かぶわな」
甲「まあ、そいつらは昔からのお馴染みと言えば其れまでだ。最近の外来品種は、強烈だ」
乙「例えば何だ?」
甲「ほら、リストラやトラウマ、それにトロイカ」

     136
少年A「おい、さっき落としたってぼやいてた手帳あったかい?」
少年B「おう、そこのベンチで見っけたよ。あったかいお尋ね有難う」
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気障な男「最近ファッション雑誌見てると、セレブものが矢鱈載ってるなあ」
荒くれ男「それがどうした。なんかモテル種に使おうってのかい」
気   「うん、繋いでストーリー作って『セレブ劇』にしちゃおうかと」
荒   「そりゃ止めなよ。お前にゃ無理だ。俺が指導するから別のにしな」
気   「じゃあ任せるが、どんなイメージだ」
荒   「馬車が疾走、飛び道具が行き交う、バーボン・ウイスキーをがぶがぶ」
気   「なあーんだ、『セイブ劇』じゃんか」

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選手A「あー痛え、こんなに擦りむいたぜ」
選手B「どーれ相当ひどいな。だが、俺達サッカー部にゃ擦過傷は付き物だぜ」
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学生T「あいつ、試験の本番に滅法強いなあ」
学生U「うん、奴は夜ばかり勉強してんだよ。そんで、どんな問題だろうと昼間無いのさ」

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湯上りの爺さん「一つや二つじゃ無いの古傷はー なんて歌があったな」
婆さん「都はるみだね。風呂で歌ってる上機嫌の声が聞こえてたよ」
 =沈黙と静寂=
婆さん「なんで急に黙っちまったのさ。もっと歌ったら」
爺さん「いやあ、わしなんざ数え切れねえ古傷で満身創痍よ。参ったなあ」
婆さん「なあに、そんなに悩む事は無いわよ。私や満身創意工夫の古着ばかりだもん」

出典:『いしい平均』増刊号(かぶや亭坊楽、2010年11月23日)
(2010年12月 石井)