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20.平均台 87-96
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A「おーい、『いしい平均』の最新号を買いたいんだが、石井主幹はこの頃どうしてる?」
B「本人は、精力的に執筆活動を展開してるとか言ってるが、まともに書いてるのを見た奴は居ねえらしいよ」
A「それじゃあ最新号もヘチマも無いわな。まあ失筆活動ってとこだな」

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爺さん「ここへ来て一段と眼が悪くなってな、今日もどえれー恥ィかいたわ」
婆さん「また読み間違いだろ。新聞かい?」
爺「左様、ヘルシー情報とか言って『温浴施設へどうぞ!』とあった」
婆「温まるよ、いいねえ。そいで?」
爺「みんなの前で大声出して『混浴施設、素晴らしい、行きてえなあ』」

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甲「君よ知るや南の国ィー。いい唄だなあ」
乙「なぬ、汁? 豚汁かい、それとも来年の干支で猪かな」
丙「君よ、しーるや…だろ、シールとかスタンプを皆見たかっちゅうことさ」
乙、丙「何でもいいから、続きが聴きてえなあ」
甲「樹々は実り、花は咲ける、風はのどけく、鳥は歌い…歌劇『ミニョン』で美女ミニョンが歌う名曲さ。音楽の時間に習ったろう」
乙、丙「なあーんだ、ミニョンかあ。身に覚えが全然無いよーん」

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娘「かあさん、数の数え方で『1、2、3』や『ひーふーみーよー』くらい知ってるけど、他にどんなのが有るかなあ」
母「そおねえ、『ちゅうちゅうたこかいな』なんか昔流行ったもんだね」
娘「あ、それイタダキ! だけど古るーい感じだわ。今ふうに変えちゃおっと」
母「現代向きにかい、どう変えるって?」
娘「チューチューキスかいな」

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兄「おーい、そんなに寝てばっかりだと体がなまっちゃうぞ。しっかりせい!」
弟「天高く食欲の秋で、喰っちゃ寝・喰っちゃ寝の連続よ。ご忠告は有難てえが、もうマンネリだあ」
兄「あーあ、だせー(惰性)奴」

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使用者「ここんとこ、空き巣だ・ひったくりだと物騒な情報で一杯やからナンカええ手だてでもにゃーかのう」
使用人「はあ、そ言やあ通りの角にあるラーメン屋さんとこ、味の企業秘密防衛や言うて、新しい調理台と冷蔵庫、えれえ自慢してはりまっせ」
者「企業秘密やて、大袈裟な。そんで、どないなすったて?」
人「同業者に嗅ぎ付けられねえように、立派な鍵付けたんですと。ほんまにあほくさ」

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女の子1「こないださあ、明絵が結婚したんよ。せーで披露宴によばれてね」
女の子2「へえ、どんなだった?」
1「司会のオッちゃんが『目出度い華燭の盛典です。バイキングをご用意しましたからご遠慮無く召し上がって下さい』って言うや否やみんなが料理に殺到。あたしもこの時とばかりガツガツ食べたさ」
2「卑しいねえ、まるで大食いコンテストじゃないか」
1「あんたの言うとおり。過食の盛典そのものだったわ」

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サラリーマンA「俺達月給取りは、しょっちゅう借金取りに攻めまくられて、ピーピーだあな」
サラリーマンB「確かに。でもお前は何時も懐に相当の金を入れてるようだからいいやな。こっちは、ローンを取り立てられて取り付く島も無いさ」
A「ふむふむ、鳥なら鳥で『極楽鳥』や『鳳凰』ってクラスまで昇りたいねえ」
B「とてもじゃないのう。俺の財布は、『四十雀』(しじゅうから)さあ」

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ぺペン、ペンペンペンペン、はっ。
弟「おっ、三味線か。いい音色だねえ」 
兄「小唄の稽古なんだが、今日は二日酔いで『本調子』じゃないわ」
弟「無理しないほうがいいぜ。糸の調子を変えてみたら?」
兄「うえっ、うえっ」
弟「それじゃあ『二上がり』だわ」

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雷さま「おい雲よ、この辺りでぼつぼつ大物を落そうかい?」
雷雲「さっきから眼を凝らしているんだが、良い標的が見当たらねえよ」
雷「そんな物あ、どうでもええぞ」
雲「いやいや、ちゃんと臍を狙わにゃあ。それには下界がよう判らんと…」
雷「じゃあ腹や臍に詳しい外科医に聞こうぜ」

出典:『いしい平均』増刊号(かぶや亭坊楽、2006年11月23日)
(2007年1月 石井)