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18.平均台 78-86
       78
男「おーいお茶」
女「何よ。ペットボトル茶の名前なんか言ってさ」     
男「さよか。じゃあ、ネスカフェ」
女「無えーす」
男「バンホーテン・ココアは?」
女「ここあ、昼間の日本だから、晩も奉天も無縁です」
男「奉天、古いなあ、ま、いいか。平成も17年だもんな、しょうわ(昭和)無い」
女帝「あっそう」

     79
夫「歌さ歌いに行こか?」
妻「今晩とても忙しいのよ」
夫「裕次郎をちょっとやるだけだから、付き合えよ。いいじゃん、ねー」
妻「もう、言い出したら聞かないんだから。じゃー行くわよ、腐れ縁の義理って
事か」
夫「かたじけねえなあ。おぎりよ、今夜もありがとおおううー」

     80
牧場主「こりゃ何ちゅこっちゃ、どえれい散らかりようで」
牧童「はっ、いやいや鶏のせいですわ。てーしたこたあ無いすよ」
主「お前も鶏も無事で何よりだが、どしてこないに散乱しとる?」
童「あんまり小屋が狭いもんで、押し合いへし合いの産卵だったんすよう」

     81
飴ん坊「ちょいと物を伺うが、真言宗の弘法大師は『空海』か?」
風来坊「左様じゃ。ところで丁度、時分時だ、なんか『喰うかい』?」
飴「なあにを言いやがる、詰まらぬ地口を。こちとらあ信じるなら天台宗よ」
風「おっ、伝教大師だな。いいぞ、深甚な信心のまつ『最澄』(最中)ってか」
飴「まーた下手な駄洒落を。時に、お前さんは浄土宗か? そんなら、いい加減に
あっしの事なぞ『法然』(放念)してくれ」
                           
     82  
A「この家は、築後何年くらいかね」
B「さあて55年あたりかなあ。それが何か」
A「いや水が天井からぽたぽたと落ちて来るんだわ」
B「そりゃ漏水じゃ。55と言やあ昔の定年だなあ。大分草臥れる頃よ」
A「ん、合点がいった。まさに老衰だあ」

     83
先生「住友、三井、三菱…、これらを財閥と言った。良い事もしたが、阿漕な事もやったという話だ」
生徒「ふーん、それで罪や罰もあったんで、『ザイバツ』なんだね」

     84
嫁「うちの人の父親って、とても物分りが良いの、助かるわ」
友人「へー、今日日かなり珍しい人物じゃない」
嫁「そうなの、だから今度チャンスを見て大きな声で言って置こうっと」
友人「なんて?」
嫁「ナイス・シュート(舅)!」

     85
甲「なんやら馬鹿にせわしなったなあ」
乙「そりゃ、じきに年の瀬やもん」
甲「老舗? わしとこ、そない古うないわ」
乙「しにせや無い。年の瀬や言うたんや」
甲「さよか、耳おかしなったな。歳のせいや」

     86
爺「空模様が怪しくなっとるのお」
婆「ええ、もうポツリポツリ来てますよ」
爺「そうか、出掛けるのに困るわな。何かいいお呪いでも無いかな」
婆「じゃあ、コーラス歌いましょうか?」
爺「なんで又コーラスを?」
婆「晴れるや、ハーレルヤ!」

出典:『いしい平均』増刊号
(かぶや亭坊楽、2005年11月23日)
(2006年1月 石井)